事件内容
9日の午後4時半頃メルボルンの中心街に車が突っ込んだ。現場は有名百貨店やデパートが立ち並ぶ大通り。
男は車から降りて車に火をつけた後に、通行人を無差別に刃物で攻撃。三人が刺されてその内の一人は死亡が確認された。
駆け付けた警察数人と刃物をもった男の攻防がしばらく続いたが、間もなく男は至近距離から警察に胸を打たれて倒れこんだ。
男は病院に運ばれたが死亡した。
発砲
発砲した警官は警察学校を修了してまだ三か月しか経っていなかったが、ビクトリア州警察長はその警官の判断と行動を称賛している。
男の胸に至近距離から銃弾が撃ち込まれる前、周辺に避難していた市民たちは刃物男を取り押さえようとしている警官たちに対して何度も「男を撃て」と大声で叫んでいた。
この声が結果として警官に拳銃の引き金を引かせた可能性も否定できない。
犯人詳細
犯人の名前はハサン・カリフ・シリ・アリ(Hassan Khalif Shire Ali) で、ソマリア出身の30歳のオーストラリア人男性。メルボルンの中心から西に車で40分ぐらいのウェレビー(Werribee)に家族と住んでいた。
シリ・アリの自宅周辺は10日の朝から警察とマスコミに取り囲まれていて、シリ・アリの妻は自宅で警察の事情聴取に応じている。
オーストラリア保安情報機構(ASIO)のテロ関連要注意人物リストには400名ほどが記載されているが、シリ・アリはそのうちの一人だった。
ASIO は2015年、シリ・アリがシリアに渡航する用意があると突き止めた後パスポートを失効させた。
シリ・アリは過激な思想を持ち合わせていたものの国に対する実際の脅威にはなっていなかったとして、テロ対策班(JCTT)の監視対象に今までなることはなかった。
シリ・アリの弟
21歳の弟は2017年の大晦日にメルボルンの観光地フェデレーションスクエアで大規模な襲撃事件を起こそうとしたとして逮捕、起訴された。
テロとの関係
イスラム国はウェブサイト「アマークニュース(Amaq News)」で、今回の犯人はイスラム国戦闘員の一人で、彼はアメリカ同盟国の市民を標的にするという我々の要望に沿って殺傷行為を実行した、と述べている。
死亡者
刺殺されたのはシスト・マラスピーナ(Sisto Malaspina)で、メルボルンで1970年代からカフェを営んできた。
オーナーの死を受けてカフェは今週末閉店される。すでにカフェには多くの花が手向けられている。
ショッピングカート
警官たちがナイフをもった男を取り押さえようとしているときに、タイミングを見計らってショッピングカートを男にぶつける方法で応戦した市民がいた。
カートをぶつけられた男は体勢を崩すなどしたので一定の効果はあったのかもしれないが、男がナイフだけではなく銃も携帯していたらこの市民は非常に危険な状況に陥っていたかもしれない。
事件後に警察はカートで応戦した市民を非難はしなかったものの、このような事件の際は細心の注意を払って行動するように広く市民に呼びかけた。
ホームレス
ショッピングカートを使って刃物男に立ち向かった市民の名前はマイケル・ロジャースで、46歳のホームレスということが判明した。
カートで刃物男に立ち向かったのは本能的なもので市民の安全を守る警察の手助けをしたいという気持ちだけだった、とロジャースはその時の心境を振り返る。
今回の件でロジャースの携帯は壊れてしまい、修理等のあてもないがロジャースはあまり気にしていないという。
メディアやSNSではロジャースは「ショッピングカートヒーロー」だと称賛されているが、ロジャース自身はは自分はヒーローなどではないと謙虚な姿勢を貫いている。
ロジャースの勇敢な行動をとらえた動画はSNSで瞬く間に広がり、メダルの授与やオーストラリアの首相に推す声まであがった。
クラウドファンディング
メルボルンのホームレス団体は GoFundMe で、何の見返りも期待せずに市民と町を守る警察の手助けをしたホームレスのロジャースのためのクラウドファンディングを募った。
5千ドルを目標に始めた募金は、半日もたたずにその3倍の2万ドルに達した。
集められたお金はホームレス団体からロジャースに渡され、ロジャースの社会復帰のために使われる予定。